LuxTagプロジェクトと高級品について

訳あって、 NEMのLuxTagプロジェクトに関心を持っています。

後述するLuxTagに関する日本語の情報を読むと、高級時計などが正規品であることを保証する、デジタルの証明にNEMのブロックチェーン技術が利用されるとのこと。
この証明書自体をNEMのアカウントとして利用することで、譲渡された所有権の追跡や市場流通後の製品に関する情報を得られるというもの。

ブランド品のリユース業に携わった経験から、LuxTagの証明は二次流通を担う側は価値を見出しにくく、メーカー側はなんらかの利用価値は見いだせるのではないかと考えます。

今回はブロックチェーンの技術が既存の業界に与える影響について、自分が知る範囲でその可能性を考察してみました。

はじめに

登場人物は以下のとおり。

メーカー:高級時計販売会社
購入者:高級時計を正規代理店等で購入する人
二次流通業者:質屋、リサイクル業者、メルカリなど

まず最初にメーカー側は自社のプロダクト(商品)を購入する人に保証書を発行しています。
この保証とは、一定期間内に動作不良が発生した場合、無償で修理を行うなどの内容となっています。
(保証内容は各社異なりますが割愛します)

つまり、LuxTagがデジタルな証明書を用いて、正規品であることを証明することと、既存の保証書とは意味が異なります。
この点に注意していただき、考察におすすみください。

約10年間ブランド品のリユースに携わった経験はありますが、あくまでいち個人の意見なのであらかじめご承知おきください。

考察:メーカー側の利用価値

某有名時計メーカーは、販売する腕時計本体にQRコードのような印がついたシールを貼っています。
これは、何らかの管理をするためのものらしいですが、真偽は不明。
プロダクト(商品)デザインに細心の注意を払うメーカーが、このようなタグ付けを意味なく行うことは、通常許されません。
腕時計では細部のデザインにどれだけのこだわりを表現できるか、近年の競合各社の差別化はますます激しくなっており、相応の理由があると考えられます。

また、流通する過程で上記のシールが剥がされる場合があるなど、購入者側にはあまり意味を持たせていない様子。
某Q&Aサイトにシールに関する質問が出ておりますが、もちろん明確な理由は不明のままです。
スマホ等のQRコードリーダーでも読み込めないので、専用のリーダーがあると推測されます。

そこまでして何をしたいのか?
より深く考察してみます。

商品管理の合理化

まず考えられるのは、付属品や保証書(ここではLuxTagではなく紙やカードなどの現物)の管理です。
腕時計本体と付属品などを別送で納品する際に、双方を紐づけるため一意のシリアルコードで管理されているのはよく知られるところですが、人間が識別するのではなく機械で自動的に識別する際にこのQRコードのようなものが使われていると推測します。
(このあたりは企業秘密でしょうから、推測の域をでません)

販売戦略

前述のQRコードのような印は、簡単に剥がせるため販売する時点ではもう役目を終えているでしょう。
しかし一意のシリアルコードは製品情報を含み、かつマーケティングにも活用されていると考えます。

販売戦略やカスタマーロイヤル向上に、具体的にどのような形で利用されるのかまではわかりませんが、非常に長い歴史を持つ会社なので、顧客ニーズに対するレスポンスは各プロダクト(商品)に反映され続けているはずです。

販売データは販売店の売上を集計する事で容易に得られます。
しかし高級な時計はプロダクトのライフサイクルが長いため、販売時点のデータだけでは顧客のニーズを精緻に把握することは困難です。

そこでメンテナンスの機会が次の接点となります。

販売時点のデータと商品の固有のシリアル番号を記録しておけば、数年単位で必要となるメンテナンスや修理の際に照合は可能です。

ここでも一意のシリアルコードで購入時点からどれだけの期間を経過したらどのような状態に劣化するのか否か、商品の使われた結果について、ある程度の情報が得られます。

メンテナンスや修理の持ち込みの時に、本人確認手続きがなされれば、購入者本人によるものか否かは判別できるでしょう。

ただし、ここで本人以外の持ち込みであっても、メンテナンスや修理を断るメーカーはいないと考えられます。
さまざまな理由で本人が足を運べないケースがあるからです。
もちろん二次流通されたケースも考えられますが、この時点ではメーカー側はどちらのケースなのかは判断できません。

また、ここまでは既存のサービスの範疇であり、LuxTagの証明はなんら価値に影響していません。

メーカー側の利用価値について

本題です。

LuxTagで実現できることが、正規品であることと所有権の証明であるならば、既存のサービスでほぼ賄えており、デジタルな証明に置き換わったところで影響はあまりないでしょう。
購入者が二次流通の際に、所有権を譲渡する証明を記録する必要性もない(動産の所有権の証明は、不動産のように登記制度がないため、意思表明と引き渡した時点で譲渡成立)し、メーカー側もメンテナンスや修理の際に所有権の証明を必要としていません。

本当に利用価値はないのか?

それはメーカー側が二次流通でプロダクト(商品)を手にするユーザーを顧客として捉えるか否かにかかってくると思います。

なぜならば今までは二次流通の旨味は二次流通業者のものでしたが、それを市場とみなすならば、差益をメーカー側に取り戻せる(*1)からです。

この辺りの考え方はなかなかセンシティブで、万一偽造品や模造品をメーカー側が取り扱う(再販する)となると著しい信用毀損につながってしまいます。

そこで私が考えるのは、メーカー側とリユース業者が(間接的にでも)手を組んでライセンス商売をする方式です。
リスクの分散をしながら、利益を得られる収益モデルを探れるのではないかと思います。

なんと書籍ではすでにそのようなサービス(*2)があるようです。

LuxTagがこのような間を取り持つサービスと連携できれば(あるいは自分たちで事業を興す)、彼らのサービス価値は飛躍的に高まるのではないでしょうか。

考察:購入者側の利用価値

さて一方、高級な時計を購入する我々側(残念ながら私は除かれますが…)にLuxTagによる利用価値はあるのでしょうか?

ここでの購入者とは、一般的にいう正規代理店などで購入される方々を指します。

ブランドを愛する、そして愛せるプロダクト(商品)にお金を出せる人々です。

長年付き合うであろうプロダクト(商品)がどのように品質管理されるべきなのかや、販売後に発覚した欠陥に対するリコール情報などが思いつきましたが、いずれも既存のサービスで十分対応できますので、価値は見いだせなさそうです。
LuxTagが購入者に直接的に価値を生むことは、メーカーと顧客の接点に付加価値を創出できるかにかかっていると思います。

(ここは高級時計の所有者に意見を伺いたいところ。私は流通させていた側ではあるものの、利用者ではないので…笑)

よいアイディアをお持ちの方はぜひ、しいたけ(@taikibansyo)までご意見ください。
少額ですがTipNEMにてお礼をいたします。

考察:二次流通側の新事業モデルからみる利用価値

少し脱線するかもしれませんが、すでに有名なCtoCフリマサイト『メルカリ』や2017年に生まれた『cash』というサービスに、メーカー側がLuxTagによるデジタル証明サービスを展開することを前提にすると、少し見方が変わります。

メルカリ経済圏を代表とした二次流通でリユース品を購入する文化がさらに生活に根ざしていくと考えた場合、高額品は不安だから手が出ないという課題(偽造品や模造品排除などへの潜在的なニーズ)に対し、LuxTagはひとつの解決策として有効な手立てになり得ます。

質屋さんやリサイクルショップで一点一点丁寧に時間をかけてプロダクトを品定めする方式は、今後も変わらない(商圏の規模は縮小するかも…)と思いますが、川が流れるようなスピードで物が流れて消費されていることを鑑みると、デジタル証明を応用した新たな真贋サービスが生まれる可能性があります。

残念ながら、私はこの二次流通の業界から離れており、このような新しい技術と新たなサービスの創出に関われない環境にいます。
それでも未だにあれこれ考えてしまいます。

今回はそのあれこれの一部を書き起こしてみました。

注釈及び参考情報

注釈

*1:本来、市場原理主義からすると二次流通もひとつの市場であるので、取り戻すという表現は適さないと思いますが、感覚的に言い表すとこの表現になりました。

*2“古本が売れたら出版社に利益還元” 二次流通の新ビジネスはアパレルにも応用できる?

参考情報

リネットジャパングループとカイカが、仮想通貨及びブロックチェーン技術を活用したネットリユース事業における実証実験を開始

LuxTagプロジェクトに関する日本語の情報

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